産学連携の取り組み紹介
「工場向け屋内測位に関する研究」について

当社は「工場向け屋内測位に関する研究」をテーマに、広島工業大学との産学連携に取り組んでいます。
今回は研究内容のご紹介とともに広島工業大学の秦教授へインタビューさせていただきましたので、そちらの内容もあわせてご紹介させていただきます!

【研究内容について】

研究テーマ 工場向け屋内測位に関する研究
研究目的 SLAM(※1)とUWB(※2)を用いた屋内歩行者測位方式の研究を行い、遮蔽物や電波環境が悪いエリアが存在する工場等での歩行者測位システムの実現を目指す。

▶▶研究のポイント!

工場の屋内測位では、広大であるためビーコン利用には電池交換コストという壁があります。
また、コンベアや高圧トランスなど強磁気を発生する機器があり、地磁気の活用も困難という難しさがあります。
そこでSLAMとUWBを用いて高精度な自己位置測定の研究を行い、工場向け制約に対する類似性のない解決アプローチを目指します。

  • ※1 SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)
  • 拡張現実やロボット自律移動において、周囲の物体の 3 次元形状とデバイスの姿勢・位置を求める技術
  • ※2 UWB(Ultra Wide Band)
  • 超広帯域の周波数帯域幅を利用する無線通信

【秦教授へインタビュー】

秦教授

秦 淑彦教授
広島工業大学 情報学部 情報工学科

研究テーマ ヒューマンセンシングシステム、ウェアラブル周囲モニタリングシステム
専門分野 ユビキタスコンピューティング、画像情報処理

■UWBの限界を補うSLAM

ーSLAM,UWBに関心を持たれた背景はなんでしょうか。

人のモニタリングや歩行者測位、人流計測といったヒューマンセンシングにアプリケーションとして興味を持っていました。
企業にいたときは物理セキュリティに携わるなかで、センサを利用した研究を多く行っており、その流れで大学に来てからも研究を続けています。

ーアプリケーションとして興味を持たれる分野があり、その実現方式としてSLAMやUWBの活用をされているんですね。

そうですね。UWB測位自体は2000年代から研究されているもので、屋内での歩行者測位において屋外のように電波が届かずGPSとスマホでの測位はできないため、UWBという電波伝搬遅延時間で測位を行う技術が確立されました。ただ多数の基地局の設置が必要であるため、費用面に課題があり普及していない状況です。
そこで設置する基地局を減らすために、SLAMと組み合わせることになりました。
SLAMはもともとロボットの自律走行に使用されており、センサを載せて測位すると周りの建物の情報と自分の位置情報を測定してくれます。実際にSLAMのデバイスを試してみると精度が良かったため、UWBと組み合わせて試してみようと考えました。


■様々な環境での使用が期待される、屋内測位

ーこの屋内測位の技術をどのように社会に普及、価値提供していけると思われますか。

まず屋外のようにスマホだけで実現するわけでなないのですが、UWB搭載のスマホとSLAM搭載のスマートグラスを組み合わせれば測位できます。
ただ、スマートグラスの普及状況を考えると、現在は工場の作業員のような、測位場所と利用者を限定した使い方のほうが実現性があると思います。
将来、小型化が更に進み、病院で患者さんがどこにいるのか、倒れたりしていないか把握できる、そういった使い方まで拡がるといいですね。

―今後当社に期待することなどはありますか。

大学で研究していると自分で世の中に出していくことはなかなかできないので、ビジネスに役立ててもらえると嬉しいですね。あとは実際に生の声を聞く機会がないのでフィードバックには期待しています。

左:秦教授 右:神田取締役

  • 左:秦教授 / 右:神田取締役